もくじ
浮気調査の証拠確保に録音は欠かせない
浮気調査を行なうにあたり、状況の確認と証拠を確保するためには、写真や動画とともに音声の録音も欠かせない要素です。
音声付きの動画を撮れればベストといえるでしょうが、音声付きでなくても映像を撮影するにはカメラを被写体に向ける必要があります。
小型のビデオレコーダーであったとしても、相手に気付かれるおそれが高くなりますし、周囲にいる人々から不審に思われるリスクもあります。
音声付きの動画となれば、声を拾えるくらい近くに行く必要があるため、発覚するリスクが増大します。
誰もが使うスマートフォンならバレにくいのではないかと思うかもしれませんが、他人に向けるのは不自然です。
その点、音声だけを録音するなら、ICレコーダーなどの小さな機器で十分であり、相手に見えるような形で向ける必要もありません。
音声の主が誰であるかの確定などで動画に比べれば劣る部分もありますが、浮気調査にはなくてはならないものです。
浮気調査で行なわれる録音の手法
録音場所も録音機材もさまざま
浮気調査で行なう録音の手法はひとつだけではありません。探偵が使うプロ用の機材から、一般のテープレコーダーまで使用する機器も多彩です。
複数の手法や機材が使われるのは、浮気の証拠が生まれる場所が、自宅からホテルまでいろいろあることによります。
自宅での浮気を録音する
夫や妻が、自分の留守にしている間に浮気相手を自宅に連れ込んでいるケースでは、録音は比較的容易に行なえます。
たとえば、リビングテーブルの裏側にICレコーダーをテープ止めするとか、棚に置いてある物品の隙間にICレコーダーを忍ばせておくといった使い方です。
寝室であればベッドの下で見つかりにくい場所に設置する手もあります。
ただ、テーブルの下などは、ふとした拍子に発見されるおそれもあります。
また、自宅の利点を活かせるのが、テープレコーダーやパソコンの録音機能などを使える点です。
いつもの場所に置いてある機械で、浮気現場を録音されているとは思わないカップルも少なくないと考えられるためです。
警戒心の強い相手であれば、こうした仕掛けがないかをチェックするかもしれません。
しかし、そこまで警戒するくらいなら、そもそも自宅で逢引きするような大胆な行動はとらないでしょう。
自宅を浮気現場に選ぶ心理としては、まったく疑われていないという安心感を持っているか、開き直っているかのどちらかだと考えられます。
外出先での浮気を録音する
外で浮気をされている場合は、録音の難易度が一気に上がります。
使用する機材はICレコーダーが主力です。小型で携帯性に優れており、長時間の録音が可能な点が浮気調査に適しています。
外での録音は、基本的にターゲットに接近して行ないます。
しかし、接触に気付かれる危険が高いと予測されるケースでは、使用すると思われるカバンやバッグ、自家用車などに予めICレコーダーを仕込んでおくという手もあります。
遠距離の集音マイクというものもありますが、使えるシーンは限られるでしょう。
浮気調査での録音の違法性
録音そのものは違法ではない
さて、浮気調査で録音をする場合、問題となるのが録音の違法性です。
録音されていることがわかった途端、違法だと騒ぐ浮気カップルもいます。
まず、大前提として録音すること自体を原則違法とする法令はありません。
もし、そのような法令があったとすれば、あれもこれも違法になってしまいます。ICレコーダーも売れなくなってしまうでしょう。
浮気調査の録音は、自己の権利を侵害されていることを確認し証明するためのものであり、録音自体には正当性が備えられています。
そのうえで、録音が違法と判断される可能性があるのは、録音の仕方であり手段です。
違法と判断される録音とは
浮気カップルとしては、盗聴を叫びたいところです。
ただ、盗聴という概念も法令に規定があるわけではありません。
これも、録音の仕方、手段によってアウトと判断されたものを盗聴と呼べるというべきものです。
ここでは、違法性が考えられる録音の手法をチェックしておきます。
まずは、録音する場所の問題です。自宅での録音が問題になることはないと考えてよいでしょう。
たとえ、見つからないようにセットしていたとしても、自分の居住空間の状況を把握するための行為だからです。
一方、外出先での録音ですが、自分がICレコーダーを持って録音する場合は、あくまでも自分が行動している場所の録音となるため、風景写真の撮影と同様の評価が可能です。
ただし、録音そのものが禁止されている場所では問題になり得ます。
録音機を仕掛けるのが違法なケース
次に、お店のテーブルに仕掛けをするなどした場合は、録音ではなく、仕掛ける行為自体が違法となる可能性を帯びます。
仕掛ける際に傷をつけるなどすれば、器物損壊罪に問われることもあるでしょう。
不法侵入罪のケース
また、浮気相手の家に侵入して録音したり、盗聴器を仕掛けたりすれば、録音云々ではなく、不法侵入罪の検討となります。
盗聴器が強力な無線局であれば電波法違反に、コンセントの裏で結線して給電するタイプで電気工事士でないなら電気工事士法違反に問われます。
さすがに、正規の探偵業者はこのような犯罪行為を行なわないでしょうが、パートナーに裏切られた人(あなた)も暴走しないように気を付けたいものです。
録音の証拠能力
デジタルデータの証拠能力
ところで、浮気調査で動かぬ証拠として用意した録音データですが、そんなものに裁判での証拠能力はないといわれることがあります。
この主張の理由は主に2つです。早速、2つの理由が正しいかどうかを確認します。
違法収集証拠だから
まず、配偶者とその浮気相手という他人2人の会話や行為を録音するにあたり、当人たちの了解をとっていないことが問題だというものです。
これを、違法収集証拠だとして証拠能力を否定する考えです。
しかし、当人の了解がないことがイコール違法という話にはなりません。
また、違法収集証拠の証拠能力の問題は、刑事訴訟において、訴追する側、捜査機関の側が違法に集めた場合に主として検討されているものであり、民事訴訟の場合は、違法行為の助長につながるような場合や、強い反社会性がある場合に否定される可能性がある程度です。
デジタルデータだから
ICレコーダーなど、今日のデジタル化が進んだ機器においては、音声や映像の編集・改ざんが容易になっています。
このことから、アナログ機器で記録したものに比べれば、裁判での証拠能力が低いという人が少なくないようです。
そのため、フィルムカメラでの撮影やテープレコーダーでの録音が重要だともいわれています。
しかし、現実の裁判においてはデジタル録音だから認めないという話にはなりません。
裁判所へ提出する際の形式の指定がデジタルだったりもするわけです。
裁判の証拠だけが証拠ではない
以上のことから、録音は、裁判での証拠能力を否定されるケースがあることは事実だといえます。ただし、否定すべき事情がある場合に限られます。
それよりも肝心なのは、録音内容であり、浮気があったといえるような中身かどうかです。
この点で、会話の主が特定しにくいとか、肝心の行為かどうかの判別が困難な状態では、主張の裏付けとしては弱いでしょう。
ただし、民事訴訟は刑事訴訟とは異なり、合理的疑いが残る余地がないほどの証明が尽くされなければクロの認定がされないわけではありません。
録音データの提出時には、文字で書き起こした反訳書の添付が必要です。
聞き取りにくい部分は、自分でわかっている言葉を書けばよいですが、その際、事実と異なることを書いてはいけません。
また、録音したものが裁判で証拠として認められなかった場合でも、録音が無意味というわけではありません。
そもそも証拠というものは裁判の証拠だけではないからです。
裁判では証拠として認められなかったとしても、当事者間では動かぬ証拠となり得ます。
そこに記録されているものが事実であることは、当事者にはわかっていることだからです。
何もなければ言い逃れるところでも、バレてしまった以上は仕方ありません。
生々しい現場の録音を付きつけられれば認めざるを得なくなることも多いようです。
録音する目的の多くは、このためでもあります。
さらに、これが結局は裁判の証拠にもつながる可能性を持ちます。
本人が認めた時点で書類を作れば、裁判所もその書類は証拠として認めるでしょう。
刑事訴訟との違いはここにもあり、本人が認めている以上、民事では浮気を認定しない理由がありません。
ただ、どこから攻められても大丈夫なように、証拠はいろいろと押さえるようにしましょう。